no-dice

Secret Party ◇4◇ 大将の誕生日


「Happy birthday!」
バンッと音を立てて安アパートの扉を開いて入ってきたのは、鳩村だった。
「な、なんだよ、いきなり」
面食らう山県に、真っ赤な薔薇の花束を差し出した鳩村は、ウインクをして見せた。
「Happy birthday!大将」
「お、おう」
押し付けられた花束を受け取った山県の首に腕を絡めて引き寄せると、鳩村は音を立てて、その頬にキスをした。
「さあ、birthday partyと行こうぜ」
「って、いい年した野郎が2人でお誕生日会もねぇだろうがよ?」
慌てる山県を尻目に、鳩村は、抱えてきた荷物からシャンパンとケーキを取り出して卓袱台の上に並べる。
「恋人の誕生日を祝うのは常識だろ、常識」
「こっ、恋人ぉう?」
「そ、恋人」
鳩村は、面食らう山県に向かって上機嫌でウインクをしてみせる。取り出したケーキに蝋燭を立て、火をつける。
「誰が誰の恋人だってぇ!?」
喚く大将の唇を自分の唇で強引に塞いでおいて、鳩村は部屋の明かりを消した。
「おまえが俺の。さあ、大将、願い事して蝋燭消せよ」
「ば、ばっかやろう!いつ俺がおまえの恋人になったよ!」
「照れるな、照れるな。さあ、さっさと消せよ。蝋が落ちちまう」
「うるせぇ、放せ!」
暴れる山県を抱きとめて、鳩村は肩を竦めた。
「ったく、しょうがねぇなあ」
蝋燭のか細い灯りでもわかるほど真っ赤になっている山県を尻目に、鳩村は上機嫌で蝋燭を吹き消した。
「いつまでも俺たちが幸せでありますように!」
「何を言っとんじゃあ!」
「で、これが俺のプレゼント」
鳩村は、暗がりの中でネクタイを緩めると、にやりと笑った。
「いらんわ、そんなもん!」
[END]


ちなみに。柴俊夫さんの誕生日は4月7日。

初出:『裏西部』

2015.05.18再掲


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