Can't stand・・・


◇2◇

「どうせ、俺は我儘なガキだよ」
拗ねたようにそう言う巽の背に腕を回して、松田がくすくすと笑った。
「ガキだとは言ってないだろ」
「言ったも同然じゃん」
巽は、それこそ子供のように口を尖らせた。松田は、その唇に一瞬唇を触れさせると、笑いながら囁いた。
「そこがいいんだろ」
その笑みに引き込まれるように、巽は松田の唇に唇を重ねた。
「―――リキさん、好きだ。好き―――」
柔らかくついばむようなくちづけを繰り返しながら、巽はうわごとのように囁き続けた。
「気が狂いそう―――」
巽の熱く濡れた唇が、松田の細い項を辿る。巽は、松田の背を抱いていた腕を解き、シャツをたくし上げて、中に手を滑り込ませた。
「タツ―――待ってくれ」
「なんで?」
そう言いながら、巽の手は奥深くに潜り込み、滑らかな胸を彷徨った。乾いた掌が胸の突起を転がすように撫で上げると、小さな突起は硬くしこった。
「タツ―――や・・・」
加山が見ている―――何故かそんな思いに捉われて、松田は思わず身を捩った。
「ダメだよ。逃がさない」
片腕で松田の細い背を抱き留めて、巽は、松田の耳朶を柔らかく噛んだ。
「あんなヤツのことなんか忘れろよ」
心を見透かすような巽の言葉に、松田は、却ってドアの向こうの加山の存在を強く感じた。厚いスチールのドア越しに、松田の今の姿が見えるはずなどないと分かっていながら。
巽は、松田が加山の存在を感じ続けていることに業を煮やして、松田自身に手を伸ばした。布の上から柔らかく揉みしだくと、思わず濡れた吐息を漏らした松田が、巽の手首を掴んで中心から引き離そうとした。
その手を柔らかく振り払い、巽はすばやくファスナーを引き下ろした。下着の中に潜り込ませた手で、直に松田の熱を煽り立てる。
「く―――」
巽の片腕にきつく抱き留められて、巽の愛撫から逃れることのできなくなった松田は、唇をきつく噛んで声を殺した。
「声、出しなよ」
巽は、松田の背中を抱いていた腕を上げると、襟髪を柔らかく、だがしっかりと掴んで、松田を仰のけさせた。濡れた唇に、ついばむようなくちづけを繰り返しながら囁く。
「声、出して」
巽は、小さくかぶりを振る松田の唇を捕らえて、深くくちづけた。同時に、松田自身に絡めた指を淫らに蠢かして、松田を追いつめる。
「くぅ―――ん」
巽の唇に塞がれた松田の唇から、くぐもった声が漏れた。
その瞬間、巽は松田の唇を解放し、長い指で松田自身を扱き上げた。
「あっ―――」
ひとたび発してしまった声は、もう抑えることができなかった。
「ん―――」
慣れた巽の愛撫が、松田の唇から甘い啼き声をひきずりだしていく。
松田の襟髪から滑り降りた巽の手が、松田の秘部を柔らかく揉みしだいた。そっと指先を潜り込ませ、淫らに蠢かせる。
「や・・・め―――」
身を捩って逃れようとするのを、逆に利用して、巽はより深く指を挿入した。松田の内奥のもっとも敏感な部分を、巽の指がなぞり上げた。
「あ―――」
前後から攻めたてられて、松田は、堪えきれずに甘い悲鳴を上げそうになり、巽の広い背中に縋りつくように腕を回すと、その肩に歯を立てた。
「ダメだよ、リキさん」
残酷なまでに甘く囁くと、巽は、また松田の襟髪を掴み、強引に顔を仰のけさせた。強引にくちづけ、舌を絡める。口蓋をちろりと舐め上げると、松田の身体がぴくりと震えた。
「タ・・・ツ、やめ―――」
濃厚なくちづけの合間に、松田が懇願するように呟いた。
「ダメだ」
背中がぞくりと震えるような濡れた声で囁くと、巽は、松田の細い項に舌を這わせた。長い指が、再び絶え間なく、松田自身を責めたてた。
加山が見ている―――そう感じることで、松田は巽の与える快楽の海に、より深く溺れていった。
松田ののけぞった首筋に唇を這わせながら、巽が囁いた。
「もっと、もっと声、聞かせて―――」
巽は、松田の内部から指を引き抜くと、手早くファスナーを下ろし、自らの昂ぶりを引き摺り出した。巽の指に馴らされて、今では巽自身を待ちわびているかのような松田の秘部に、そっと昂ぶりを押し当てる。
「あいつに、リキさんは俺のものだって教えてやる」
そう言うと、巽は、ゆっくりと松田の内部に身を沈めていった。
「あ―――ああああぁっ」
若々しい巽の雄を受け入れて、もうとどめようもなく、松田の唇から甘い嬌声が溢れだした。
松田の細い首筋に、赤い烙印を残しながら、巽が呟いた。
「リキさんは、俺のものだ―――」
ゆっくりと突き上げるように腰を動かすと、松田の熱い肉襞が、絡みつくように巽自身を甘く締めつけた。
巽は、焦らすように殊更ゆっくりと腰を蠢かした。松田が、切なげに眉を寄せて、甘い吐息を漏らした。
「タツ―――タツ」
細い指が、巽の背中に爪を立てた。巽にとっては、キリキリと食い込んでくる爪の痛ささえ愛おしかった。
「リキさん―――」
ねっとりと絡みつくようなくちづけを交わしながら、巽と松田は次第に上りつめていった。
「ん―――ふ」
甘い吐息が零れ落ちる松田の唇にくちづけを繰り返しながら、巽は徐々にストロークを速めていった。
巽の動きが激しさを増すにつれ、松田の細い体は、がくがくと揺れた。
「あ―――っ」
「く―――」
松田の、悲鳴のような甘い声に、巽の声が重なって、二人は同時に白い精を放った。
快楽の強い余韻にくずおれそうになる松田の細い身体を、巽が強く抱き締めた。荒い息をつく唇に、ついばむようなくちづけを繰り返す。
そのとき、ドンドンとドアを叩く音が響いた。厚いスチールのドア越しに、加山が松田を呼ぶ声が聞こえた。
「松田!松田!開けてくれ、松田!」
「―――加山」
松田は、苦しげに顔を歪めると、両手で耳を塞ぎ、蹲るように膝をついた。
巽は、松田の両手を掴んで耳から引き剥がすと、その耳元に口をつけて囁いた。
「あいつの声なんか、聞かせない」
「タツ―――」
戸惑うように巽を見上げる松田の細い身体を抱き上げて、耳朶を噛みながら、甘く囁く。
「まだだよ。まだ、これからだ―――」


2005/12/20
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