Can't stand・・・


◇3◇

ぞくりと身体を震わせた松田が、くちづけをねだるように、巽の首に腕を絡めた。
「全部、忘れさせて―――おまえだけで満たしてくれ」
切なく囁く松田の濡れた唇をくちづけで優しく塞いで、巽は、大股にリビングを横切り、寝室のドアを開けた。細い体をそっとベッドに下ろし、真上から松田の眸を覗き込む。
遠く、玄関からドアを叩く音が微かに響いてきた。松田は、身体をびくりと震わせると、きつく目を閉じた。その瞼にそっとくちづけて、巽が囁いた。
「俺のことだけ考えて」
そのまま、頬に、額に、顎に、と松田の小さな顔中にくちづけを落としていく。細い頤を辿った唇が、そのまま細い首筋に滑り降りた。時折赤い徴を残しながら、巽の唇は、松田の華奢な鎖骨を辿り、薄い胸を這った。滑らかな浅黒い肌にそっと息づく薄紅色の蕾をくわえ込み、舌で転がすように愛撫する。
「あ―――」
堪えきれずに、松田の唇から、甘い吐息が漏れた。
巽の指が、もう一方の蕾を摘み、捏ねるように扱きあげた。
「く―――ん」
松田は、声を漏らすまいと唇をきつく噛み締めた。その唇にそっとくちづけて、巽が囁いた。
「声、出して」
声もなく、小さくかぶりを振る松田の耳元で、巽が甘く囁いた。
「感じてよ、リキさん」
巽の言葉に、さっと頬を染めた松田が巽を見上げた。その薄い唇についばむようなくちづけを落としながら、巽の温かな掌が、松田の細い体を隈なく撫でていく。
「俺のことしか考えられなくなるまで、感じて」
先刻の、追い詰めるような愛撫とは打って変わった優しい手に、松田の体は蕩けるように反応を返し始めた。浅黒い肌がほんのりと上気し始め、胸の突起が硬くしこり始める。
甘いくちづけを繰り返しながら、巽の掌が、指先が、松田の細い体を隈なくまさぐっていく。
一度も触れられることのなかった松田自身が、ゆっくりと硬く勃ち上がり始めた。それを知りながら、巽の指は、巧妙に松田の中心を避けて、愛撫を繰り返した。
「タ―――ツ」
掠れた声で巽の名を呼んだ松田が、切なく腰を巽の腰にこすりつけた。巽の屹立した昂ぶりに触れ、松田の体がぴくりと震えた。
「タツ―――?」
その先の行為を求めるように、松田の下肢が巽の下肢に絡みつく。
「まだだよ。リキさんがもっと感じてから」
そう囁くと、巽は松田の首筋に唇を滑らせた。項にそっと舌を這わせ、薄い肩に優しく歯を立てる。掌で胸の突起を転がし、もう一方の突起に歯を立てた。
松田自身がゆっくりと脈打ち始めるのを下腹で感じながら、巽は、丹念に松田の体中に愛撫を施していった。
「ふ」
松田の濡れた唇から、甘い吐息が漏れる。体の奥に灯った切ない疼きに、松田は腰を揺らめかせた。
「タツ―――タツ、タツ」
松田の細い腕が、巽の広い背中に縋りつくように回され、慈しむようにそっと撫で上げた。
「お前が、欲しい」
羞恥にきつく目を閉ざして、松田が囁いた。
「俺だけのものになって」
巽は、そう囁くと、松田の細い腰をかき抱き、その狭い内部にゆっくりと身を沈めていった。
「あ――――」
たっぷりと愛撫を施され、巽自身を待ちわびていた松田の秘部は、貪るように巽自身を飲み込んでいった。
巽は、松田の反応を探るように、ゆっくりと腰を蠢かせた。
体の奥底から沸き起こる快楽に、松田の目許がほんのりと紅く染まった。
「タツ―――」
「感じる?」
巽は、松田の耳元にそう囁くと、ゆっくりと腰を突き上げた。
「あっ―――」
仰け反る松田の首筋に、そっと唇を這わせて、巽が囁いた。
「俺のことだけ、感じて」
言葉とともに、先端まで引き抜いた楔を、ゆっくりと根元まで深く突き立てる。何度も何度も繰り返される緩慢な動きに、松田の内奥に燠火のような快楽の灯がともる。
「タツ―――もっと・・・もっと強く」
松田が、すすり泣くように囁いて、腰を揺らめかせた。
巽は、焦らすように、殊更ゆっくりと腰を突き上げた。
「あぁっ、タツ―――」
巽の背に縋りついた松田の爪が、巽の肌に傷跡を残していく。松田の濡れた唇は、間断なく巽の名前を呼び続けた。
「タツ―――タツ、タツ・・・」
巽は、ゆっくりとストロークを速め、打ち付けるように松田の内奥を貫き通した。
「タツ―――っ」
高みに達した巽は、松田の中に自身を解放し、同時に松田の白い精が二人の下腹部を濡らした。
巽は、がくがくと快楽の余韻に体を震わせる松田の細い身体を、胸深く抱き寄せた。
汗に濡れた髪にそっとくちづけて囁く。
「あんたは、誰にも渡さない」
「タツ・・・」
松田の濡れた唇が、くちづけをねだるように薄く開かれた。その唇をそっと塞いで、巽は、松田の背中を抱く腕に力を込めた。
「リキさんは、俺のものだ」
巽の言葉に、松田の胸は震えた。
松田は、巽の首に腕を絡ませ引き寄せると、その額に唇を触れさせて囁いた。
「好きだ。おまえが好きだ」
どうしてこんなにも心惹かれるのか。おそらく正当な理由などないのだ、と松田は思った。出逢ってからの時間でもなく、理屈もなく、ただ傍にいたいだけの―――恋。それだけなのだと・・・。

[END]

2006/03/05
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