Secret Party ◇5◇ ゲンの誕生日


「ゲン兄―――!」
勤務を終えて、西部署の正面階段を降りていた源田は、兼子に呼び止められて振り向いた。今日は宿直の兼子が、源田の後を追って、駆け降りてきた。
「どうしたよ?」
「ゲン兄に、これ―――」
と差し出されたのは、あまり大きくない封筒のようなものだった。
「何だ、これ?」
「今日、ゲン兄の誕生日じゃないですか」
にっこりと兼子が笑う。
「お誕生日おめでとうございます」
「お、おう。ありがとよ」
源田は、ちょっと照れ臭そうに手の中の封筒をひっくり返した。そこにある文字を目に留めて、声に出して読む。
「図書券?」
「はい。ゲン兄、本、好きでしょ」
また、兼子がにっこりと笑った。
「ありがとな」
源田は、嬉しそうに笑うと、兼子の肩をバンバンと叩いた。
「じゃ、僕、これで」
そう言うと、もう一度にっこり笑って兼子は正面階段を上っていった。
顔に似合わずロマンティストの源田は、このプレゼントを詩集に換える事だろう。
[END]


ちなみに。苅谷俊介さんの誕生日は11月26日。

初出:『裏西部』

2015.05.18再掲


[4][Story]