no-dice

やっぱりあい(す)がなくっちゃね☆タツとリキ☆


「リキさん」
真夏の陽射しが照りつける公園の、花壇の柵に凭れて佇む松田に、巽がソフトクリームを差し出した。少し離れた場所には陽炎が揺らめいている。
「サンキュ」
受け取ったソフトクリームを早速口に運ぶ松田を見るともなしに見ながら、巽も自分の分を口元に運んだ。
松田の薄い唇がクリームの先端をぱくりと呑み込む。唇についた白いクリームを、唇からちらりと覗いた薄紅色の舌が舐めとっていく。ただそれだけのことが妙に淫靡に映り、巽はどきりとした。クリームを掬い取る、独立した生き物のような柔らかな舌の動きに目を奪われる。身体の芯が、何もかもを溶かしてしまいそうな外気の暑さよりも熱くなった気がして、耳が火照った。
その視線に気づいたのか、目を上げた松田とまともに目が合い、巽の息が止まった。
「タツ」
「へ?」
虚を衝かれてびくりと身を引いた巽の耳元に、松田が口を寄せて囁いた。
「おまえ、今やらしいこと考えてたろ」
「えっ!?―――あ〜〜〜っ」
動揺のあまり後ずさった巽の手のソフトクリームが、コーンからぼたり、と零れ落ちた。思わず巽の視線が、地面に落ちて融け始めたクリームに釘づけになる。
その様を見て取った松田が、しょうがねぇなぁ、と自分のソフトクリームを巽の手に持たせた。
「ほら、タツ。これやるから、泣くなよ」
「泣いてねぇよっ」
手にしたソフトクリームと松田の間に視線を忙しく往復させて、巽が抗議する。松田は、構わず背を向けてさっさと歩き出し、ひらひらと手を振って見せた。
「さっさと喰わねぇと、融けちまうぞ」
巽は思わず、つい先刻まで松田の舌が掬い取っていたソフトクリームを見つめ、少し躊躇ったあと、思い切って口をつけた。
松田の柔らかな舌の動きが、脳裡に焼きついて離れない―――。

[END]


[Story] [リュウとリキ] [ハト×大将]