再会

「団長・・・」
ぐったりと力を失った松田の身体を囲んだ大門と仲間たちを足下に見下ろして、松田は呟いた。悲痛な表情の仲間たちに、申し訳ない思いが松田の胸にこみ上げた。
「みんな―――」
静かな眼差しで、仲間たちを見下ろしていた松田の肩を誰かが優しく掴んだ。
「リキさん」
その懐かしい声に、松田は振り向きざま、どんっと身体ごとぶつかるようにして抱きついた。
「タツ!」
「リ、リリリ、リキさん!?」
松田らしくもなく感情をあらわにした行動に、巽はうろたえた。その巽の胸に顔を埋めたまま松田が呟いた。
「やっと逢えたな」
「え?嘘?マジ?」
松田の言葉に狼狽したような巽の声が重なる。
心外なその声に、松田はちょっとむっとしたような表情を浮かべて見せた。
「なんだよ、タツ。俺に逢えて嬉しくねーのかよ?」
慌てた巽の声が応える。
「嬉しくないわけないじゃん!―――けどよ」
巽は、松田の細い肩に両手を突っ張り、自分の胸から引き剥がした。そのまま、松田の顔を見るのが怖い、とでも言うように顔を伏せ、ぎゅっと目を瞑った。
「けど、なんだよ?」
「何で、何であんな無茶―――」
何だそんなことか、と松田は笑った。
「おまえならどうした?」
「俺なら―――」
一瞬口篭った巽が一気に言った。
「俺だって同じことをしたさ!でも、でも俺は、リキさんには生きてて欲しかった。ずっとずっと生きてて欲しかったんだ」
「おまえがそれを言うのか?俺にあんな置いてきぼりを食わせたおまえが?たった一人でさっさと逝っちまったおまえが?」
「リキさん・・・」
「俺があれからどんな思いで生きてきたか、おまえには分からないだろう?」
松田は、巽の両頬に手を添えて引き寄せた。額と額を触れ合わせ、至近距離から巽の眸を覗き込む。
「俺は、ずっと、おまえに逢いたかった―――」
そのまま、巽の唇に唇を寄せる。引き寄せられるように二人の唇が重なった。
「リキさん―――」
「これからはずっと一緒だ」
囁いて、もう一度巽の唇に唇を重ねると、松田は巽の広い背中に細い両腕を回した。
「―――もう置いてきぼりはゴメンだ」
巽の腕が松田の細い背中をかき抱いた。
「もう離さない―――」
二人は顔を見合わせると、足下で松田の亡骸を囲んでいる仲間たちに目をやった。
「団長、みんな。元気で―――」
そのまま二人の姿は、青空に溶けるようにして消えていった―――。
[END]

2004/10/24
[Story]