山吹


どうして、俺を抱くのだろう。
布団に横たわる秀の傍らに胡座をかき、着物を肩に羽織っただけの姿で、煙管を使う男を見上げる。
切れ長の眸を細めて煙を吐き出す端正な横顔には、何の表情も見て取ることはできない。
訊くだけ無駄というものだ。もとより、訊くつもりもない。
たとえ、どんな答えが返ってきたとしても、そんなものには何の意味もない。橋の欄干に書かれた落首の方が、まだましだ。
まったく、くだらない。
秀は、つと布団の上に目を落とした。
山吹。
色鮮やかに花をつけ、決して実ることのない、山吹。
色ばかりで、実(じつ)がない。
この男も、この関係も。
いつか花が落ちれば、それで終わる。それだけのこと。
初めから、分かっていた。所詮は、ただの戯れ。それ以上の何かを求めても、無駄なこと。
秀は、ふっと息を吐いた。
ごろりと寝返りを打ち、勇次に背を向ける。
まったく、くだらない。
そっと目を閉じた。風の音だけが聞こえる。
山吹も、もう散るだろう・・・。
[終]

2015.07.06

[Lyric]